目的とトレードオフを決め、ステークホルダーの合意を得る
プロダクトマネジメントについて、最近の気づいたことを備忘として残しておく。
なんでもトレードオフだ。プロダクト開発だけでなく、個人の目標設定であってもそうだ。
解決すべき課題を設定したら、方法論を考える前にやらねばならないのは、トレードオフ…つまり、優先すべきことと諦めるべきことを決めることだ。
そして、目的と解決すべき課題とトレードオフは、要件を決める前に、関係者と合意が取れている必要がある。
優先すべきこと、諦めるべきこと
『アジャイルサムライ』で公開されているインセプションデッキの一部「トレードオフスライダー」。これは、優先すべきことと諦めることを可視化しており、関係者と共通認識を持ちやすい。
プロダクトによって項目は異なるだろう。私の関わる案件は、暫定、こんな感じだ。
例えば、以下の条件で海外のローカライズ対応をするとする。
- 事業としては早々に海外展開したい。
- 既存ユーザはまだおらず、使われるかどうかもわからない。
一例だがトレードオフスライダーは、
- 低コスト:5 (=低コストであるべき)
- 最速の市場投入:5 (=最速であるべき)
- 高品質:2 (=品質は低くて良い)
- メンテナンス性:1 (=メンテナンス性は悪い)
- オペレーション低負荷:1(=オペレーションは高負荷)
and more ...
というようになり、1をつけたものは「スケールしたら考えよう」と判断される。
要件・仕様検討の前に、まずは合意を取る
目的とトレードオフを決めたら、ステークホルダーと合意を取る必要がある。それは、それぞれが同じイメージを描けている状態であり、且つ、納得している状態である。
目的と課題は、起案者やレビュアー、決裁者に合意を取る。
すべてのスタートになる目的と課題の認識が違うと、トレードオフの判断もできないからである。これを抜きに、認識の齟齬を孕んだまま進めると、だいたいのことが「勝手な想像をして苦労して悩んだね」「無駄な時間過ごしたね」ということになる。(日本人的な「察する美学」ゆえ、陥りやすいのでは。何も言われてないけど当てたい、という。)
次に、トレードオフの判断は、すべてのステークホルダーの合意を取る。
これは課題を設定した後から、要件や仕様を考えるまでの間に完了させておく。時間をかけて仕様を検討した後に、周囲からあぁでもないこうでもないと振り回されるのは、立ち帰るべき場所が無く、各人の価値観が独り歩きするからだ。帰るべき場所が、合意済の目的、課題、トレードオフレーダーだ。
また、諦めると判断したものは、誰かの価値観を損ねたり、誰かに負荷を背負ってもらうことになる。協力を得るためには、目的への共感を含めて合意が必要となる。目的については、不慣れな間は、不足があるより伝えすぎな位で良い。
諦めたものは、リカバリされるのかされないのかも伝えられると良いだろう。「スピードを早めるために、オペレーションでカバーする必要があるけど、ごめんなさいね。でも、とあるタイミングでリカバリするからね」といったように。
事業方針とずれた価値観をお持ちの場合、ミッション論では通用しないので、その辺の説き方は、これから考えることとする。
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